中1国語 文章問題集

ジャンル:説明文

第1題(説明文)

言葉の不思議——名前をつけることの意味

対象:中1 / 難易度:★

本文

人間は昔から、あらゆるものに名前をつけてきた。星に名前をつけ、花に名前をつけ、見えない風にさえ名前をつけた。なぜ人間は名前をつけることにこれほどこだわるのだろうか。

名前をつけるということは、その対象をほかのものと区別することだ。たとえば「赤い花」と言うより「バラ」と言うほうが、相手に伝わる情報の量がぐっと増える。形・色・香り・季節・意味――これらすべてが「バラ」という一語に凝縮されている。名前は記号ではなく、その物の持つ世界ごとまるごと指し示すものなのだ。

さらに、名前は感情と結びつく。「春」という言葉を聞くだけで、温かい風や新入学の緊張感が頭に浮かぶ人も多いだろう。言葉はその物の意味だけでなく、それにまつわる記憶や感情も一緒に運んでくる。

つまり、名前をつけることは世界を整理するだけでなく、人と人とが同じものを共有するための橋をかけることでもある。言葉という橋があるからこそ、人間は互いの心の中を覗くことができるのだ。

問題

  • 筆者が「名前は記号ではない」と述べた理由として本文に書かれていることを、本文中から30字以内で抜き出しなさい?
  • 「言葉はその物の意味だけでなく、それにまつわる記憶や感情も一緒に運んでくる」ということを具体的に示した例を、本文中から35字以内で抜き出しなさい?
  • 名前をつけることの意味について、筆者が第4段落で述べていることを2つ取り上げ、40字以内でまとめなさい。文末は「〜こと。」で終えること?
  • この文章の内容として最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア 名前は対象を区別するための記号にすぎないが、人間は古くから使い続けてきた。
    イ 名前には対象の特徴を凝縮する力があり、感情と結びつき、人と人をつなぐ橋の役割もある。
    ウ 人間が名前をつけるのは、星や花など自然界のものに限られている。
    エ 言葉を覚えると感情が豊かになるため、語彙を増やすことが最も重要な教育だ。
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問1の解答その物の持つ世界ごとまるごと指し示すものなのだ(22字)

第2段落の「名前は記号ではなく、その物の持つ世界ごとまるごと指し示すものなのだ」が根拠。「記号ではない」理由は直後に「〜なのだ」と述べられているので、その部分をそのまま抜き出す。抜き出し問題は本文の言葉をそのまま使うのが原則。「〜から。」と書き換えてしまうと減点される場合がある。

問2の解答「春」という言葉を聞くだけで、温かい風や新入学の緊張感が頭に浮かぶ(33字)

第3段落に「『春』という言葉を聞くだけで、温かい風や新入学の緊張感が頭に浮かぶ人も多いだろう」とある。これが「記憶や感情を運ぶ」ことの具体例。「たとえば〜だろう」という具体例の構造を見抜くことが大切。

問3の解答例世界を整理することと、人と人が同じものを共有するための橋をかけること。(35字)

第4段落の「世界を整理するだけでなく、人と人とが同じものを共有するための橋をかけること」が根拠。「Aだけでなく、B」という対比構造から2つの意味を読み取る。採点ポイントは①世界を整理すること②人と人をつなぐ橋の役割、の2点が入っているかどうか。

問4の解答

本文は第2段落で「区別+特徴を凝縮する力」、第3段落で「感情と結びつく」、第4段落で「人と人をつなぐ橋」と論じており、これらを全て含むイが正解。アは「記号にすぎない」と真逆。ウは「自然界のものに限られる」とは書かれていない。エは本文の主張ではなく筆者が述べていない内容。

ジャンル:物語文

第2題(物語文)

雨の日の図書室

対象:中1 / 難易度:★

本文

梅雨の中頃、颯太は放課後になっても教室を出られずにいた。廊下の向こうでは同じクラスの武田が友人たちとにぎやかに話している。何度か声をかけようとしたが、輪の中に入れないまま雨が降り続けた。別に武田が嫌いなわけではなかった。ただ、どうしてもあの輪の中に飛び込む勇気が出なかった。

気づくと図書室の前に立っていた。迷いながら押してみると、扉はすんなり開いた。中は静かで、窓を打つ雨音だけが聞こえた。颯太は適当に棚から本を抜いて、隅の席に座った。読み始めてすぐ、場所も時間も忘れた。気がつくと夢中になっていた。これほど集中したのは、久しぶりだった。

「それ、面白いよね」と声がした。振り返ると、司書の先生が本の返却作業をしながら颯太を見ていた。颯太が表紙を見せると、先生は小さくうなずいた。「2週間後に続きが入荷するから、また来てみて」。先生はそれだけ言って棚に向かった。

帰り道、雨はまだ降っていた。傘をさす颯太の足取りは、来るときとは少し違っていた。2週間後に来る理由ができたからだ。今日まで気づかなかったことだが、図書室の扉は、颯太が思っていたより軽かった。

問題

  • 颯太が「教室を出られずにいた」理由を、本文中の言葉を使って25字以内で答えなさい。
  • 「颯太の足取りは行きとは少し違っていた」とあるが、颯太の気持ちがどのように変化したのかを40字以内で説明しなさい。
  • 「図書室の扉は、颯太が思っていたより軽かった」という表現が意味することを、颯太の心情をふまえて50字以内で説明しなさい。文末は「〜ということ。」で終えること?
  • この物語の颯太について述べたものとして最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア はじめは図書室に興味がなかったが、司書の先生に強引に誘われ通うようになった。
    イ 友人の輪に入れず孤独を感じていたが、偶然入った図書室と先生の言葉で前向きになれた。
    ウ 図書室の本に夢中になったことで、友人と仲直りするきっかけをつかんだ。
    エ 雨が好きで放課後いつも図書室にこもっており、司書の先生と親しかった。
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問1の解答武田たちの輪に飛び込む勇気が出なかったから。(22字)

第1段落の「輪の中に入れないまま」「あの輪の中に飛び込む勇気が出なかった」が根拠。颯太は武田が嫌いなわけではなく、勇気が出なかったから動けなかった点が核心。「武田たちの輪に入れなかった」と書くだけでも部分点は取れるが、本文の「勇気が出なかった」という言葉を含めるとより正確。

問2の解答孤独で行き場のない暗い気持ちから、来る目的ができた前向きな気持ちに変わった。(38字)

「行き」の颯太は友人の輪に入れず図書室に逃げ込んだ(後ろ向き)。「帰り」は「2週間後に来る理由ができた」(前向き)という変化が起きている。心情変化の問題では「前の状態→後の状態」の対比が答えの軸。採点ポイントは①孤独・行き場がない暗い心情②前向きな心情への変化、の2点。

問3の解答例これまで入りにくいと感じていた図書室が、心理的に身近で気軽に通える場所に変わったということ。(47字)

「扉が軽い」は比喩表現。物理的な扉の重さではなく、図書室に入ることへの心理的ハードルが低くなったことを指す。「思っていたより軽かった」という比較表現から、以前は「重い(入りにくい)」と思っていたことも読み取る。採点ポイントは①以前は入りにくいと感じていた②今は気軽に通える場所になった、の2点。

問4の解答

第1段落で友人の輪に入れず孤独(ア・エは不一致)、第3段落で司書の言葉がきっかけで前向きになった(ウの「仲直り」は本文にない)。本文の展開と最も一致するのがイ。アの「強引に誘われた」は誤り(自分で入った)。

中2国語 文章問題集

ジャンル:説明文

第3題(説明文)

便利さの代償——現代のデジタル依存を考える

対象:中2 / 難易度:★★

本文

スマートフォンは、現代社会において最も普及した道具の一つだ。地図を見る、友人と連絡を取る、調べ物をする――かつては別々の道具が必要だったことが、一台の端末でできてしまう。便利であることは疑いようがない。

しかし、便利さには見えにくいコストがある。人が何かを覚えようとするとき、脳は繰り返し情報を引き出すことで記憶を定着させる。ところが、いつでも検索できる環境があると、そもそも覚えようとする動機が失われやすい。記憶しなくてよい、と脳が判断するのだ。

さらに、常に通知を受け取る習慣は、深く考え続ける力を弱める可能性がある。人間が複雑な問題を考えるには、ある程度の時間、意識を一つのことに集中させる必要がある。しかし通知が来るたびに意識が途切れると、その集中が保ちにくくなる。

道具は人間が使うものだ。便利さの恩恵を受けながら、道具に使われないための意識が求められる時代になったと言えるだろう。

問題

  • 「便利さには見えにくいコスト」とはどのようなことか。第2段落の内容をもとに、35字以内でまとめなさい?
  • 第3段落で筆者が述べている「深く考え続ける力が弱まる仕組み」を、本文中の言葉を使って45字以内で説明しなさい。
  • 筆者が「道具に使われないための意識」と述べることで、読者に伝えようとしていることを50字以内でまとめなさい。文末は「〜ということ。」で終えること?
  • この文章の論の展開として最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア スマートフォンの利点を詳しく説明したあと、それを捨てるべきだと主張している。
    イ 便利さを認めたうえで、記憶力・集中力への悪影響を示し、主体的な使い方を促している。
    ウ スマートフォン依存の科学的データを複数示し、客観的に問題を証明している。
    エ スマートフォンを使う人と使わない人を比較し、どちらがよいかを判定している。
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問1の解答いつでも検索できる環境によって、覚えようとする動機が失われやすいこと。(35字)

第2段落の「いつでも検索できる環境があると、そもそも覚えようとする動機が失われやすい」が根拠。「見えにくいコスト」=表面上は見えないが実は失われているもの、という読解が必要。「記憶しなくてよいと脳が判断する」という表現でまとめても正解。

問2の解答通知が来るたびに意識が途切れ、複雑な問題を考えるための集中が保ちにくくなるから。(40字)

第3段落の「通知が来るたびに意識が途切れると、その集中が保ちにくくなる」が根拠。「仕組み」を問われているので「〜だから」という因果関係で答える。採点ポイントは①通知で意識が途切れる②集中が保てなくなる、の2点を含むこと。

問3の解答例便利さの恩恵は受けつつ、道具に振り回されず自分の意思でコントロールして使うべきということ。(44字)

最終段落の「便利さの恩恵を受けながら、道具に使われないための意識が求められる」が根拠。「道具に使われない」=人間が主体的に道具をコントロールする。採点ポイントは①便利さを否定していない②主体的・意識的な使い方が必要、の2点。

問4の解答

第1段落で便利さを認め、第2〜3段落で記憶力・集中力への影響を示し、第4段落で主体的な使い方を促す構成。アは「捨てるべき」とは言っていない。ウは科学的データの提示はない。エは比較・判定はしていない。本文の「しかし〜」という逆接の流れを押さえることが大切。

ジャンル:物語文

第4題(物語文)

ピアノの音が聞こえた日

対象:中2 / 難易度:★★

本文

七月の終わり、菜緒は三年間続けたピアノを辞めた。コンクールで入賞できなかったからではない。ある日の練習中に、「うまくなりたいのか、弾きたいのかが、もう自分でもわからなくなった」と気づいてしまったからだ。その日から、鍵盤を見るとどこか空虚な気持ちになった。

夏休みが明けて学校に戻ると、音楽の授業で伴奏者を決めることになった。菜緒は立候補しなかった。黒板の前に出た同級生の田辺が不器用な手つきでピアノに触れると、明らかに緊張した音が響いた。クラスのいくらかがこっそり笑った。菜緒は何も言えなかった。胸の中でだけ、「笑うことじゃない」と思いながら。

翌日、菜緒は音楽室に一人で入った。先生に頼んで鍵を借りた。別に何かをしようと思ったわけではなかった。ただ椅子に座り、黒と白の鍵盤をしばらく眺めた。やがて指先が鍵盤の冷たさに触れた瞬間、指がひとりでに動いていた。音が出た。菜緒は自分が泣いているのに気がついた。

「わかった」と菜緒は思った。「弾きたかったんだ、ずっと」。上手く弾くこととは別のところに、ずっと答えはあったのだ。

問題

  • 菜緒がピアノを辞めた理由を、本文中の言葉を使って30字以内で答えなさい。
  • 「菜緒は何も言えなかった」のはなぜか。菜緒の心情をふまえて40字以内で説明しなさい。
  • 音楽室での出来事をきっかけに菜緒が気づいたことを、菜緒の心情の変化とあわせて50字以内で説明しなさい。文末は「〜こと。」で終えること?
  • この物語の菜緒の変化について述べたものとして最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア ピアノの技術に自信を失い諦めたが、田辺の演奏を聴いて再び上達を目指す気持ちになった。
    イ ピアノを弾く本当の動機を見失っていたが、音楽室でピアノに触れたことで、弾くことへの純粋な欲求を取り戻した。
    ウ コンクールの失敗が悔しくて辞めたが、授業のエピソードで気持ちが吹っ切れた。
    エ 田辺を笑ったクラスメートに怒りを感じ、ピアノで自分の実力を見せようと決意した。
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問1の解答うまくなりたいのか弾きたいのかが自分でもわからなくなったから。(30字)

第1段落の「うまくなりたいのか、弾きたいのかが、もう自分でもわからなくなった」が根拠。「コンクールで入賞できなかったからではない」という否定表現にも注目する。本文の言葉を使いつつ、文末を「〜から。」でまとめる。

問2の解答笑うことではないと感じながらも、声を上げて止める勇気が出なかったから。(35字)

第2段落の「胸の中でだけ『笑うことじゃない』と思いながら」が根拠。菜緒は笑いをおかしいと感じながらも、ピアノを辞めた自分には声を上げる資格がないように感じていた可能性もある。採点ポイントは①笑うことではないと感じていた②声を上げる勇気が出なかった、の2点。

問3の解答例ピアノへの動機を見失っていたが、鍵盤に触れた瞬間に弾くことへの純粋な気持ちを取り戻したこと。(46字)

第3段落の「指がひとりでに動いていた」=意識より先に身体が動いた、という描写が菜緒の本音を示す。そして第4段落で「弾きたかったんだ、ずっと」という気づきに至る。採点ポイントは①弾く動機を見失っていた②鍵盤に触れたことで③純粋な「弾きたい」気持ちを取り戻した、の3点。

問4の解答

アは「上達を目指す」ことへの言及はない。ウは「コンクールの失敗」は理由ではないと明記されている。エは「実力を見せようとした」描写はない。本文は一貫して「弾くことの動機」を問うており、音楽室で取り戻したのは技術ではなく純粋な欲求であるイが正解。

中3国語 文章問題集

ジャンル:説明文

第5題(説明文)

「ふつう」という言葉の危うさ

対象:中3 / 難易度:★★★

本文

「ふつう」という言葉を、人はよく使う。「ふつうはそうしない」「それがふつうだ」。しかし、この言葉ほど実態をとらえにくいものもない。「ふつう」とは一体、何を指しているのだろうか。

統計的な意味では、「ふつう」は多数派のことだ。最も多くの人が選ぶ行動や状態が「ふつう」と呼ばれる。しかし、日常会話で使われる「ふつう」は多数派の実態を反映していないことが多い。人は自分の周囲の限られた集団の中で「多い」ものを、世界全体の「ふつう」だと思い込みやすい。これを心理学では「内集団バイアス」という。

さらに問題なのは、「ふつう」が規範として機能することだ。「ふつうはこうする」という言葉は、しばしば異なる行動を取る人を批判する道具になる。しかし、「ふつう」の基準そのものが人や文化によって異なる以上、それを規範として他者に押しつけることは、暴力的な側面を持ちうる。

「ふつう」という言葉を使うとき、私たちは自分の見えている世界の狭さを自覚する必要がある。それが、多様性を認める社会の出発点になるのだ。

問題

  • 「内集団バイアス」とはどのようなことか。本文中の言葉を使って35字以内で説明しなさい。
  • 筆者が「ふつう」が「暴力的な側面を持ちうる」と述べる根拠を、本文全体をふまえて50字以内でまとめなさい?
  • 第4段落で筆者が主張していることを、「ふつう」「多様性」の2語を使って40字以内でまとめなさい。文末は「〜ことが必要だ。」で終えること?
  • この文章全体の論旨として最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア 「ふつう」という言葉は意味がないため、使うべきではない。
    イ 「ふつう」は統計的には正確な言葉であり、日常的に活用すべきだ。
    ウ 「ふつう」には実態との乖離やバイアスの危険があり、規範として押しつけることは問題で、自分の視野の狭さを自覚する必要がある。
    エ 「ふつう」の基準は文化によって異なるため、世界共通の基準を定めるべきだ。
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問1の解答周囲の限られた集団内で多いものを、世界全体のふつうだと思い込むこと。(33字)

第2段落の「人は自分の周囲の限られた集団の中で『多い』ものを、世界全体の『ふつう』だと思い込みやすい」が根拠。定義問題は「〜とは〜のことである」の形でまとめる。本文の核心を簡潔に言い換えるのがコツ。

問2の解答「ふつう」の基準は人や文化によって異なるのに、それを規範として他者の行動を批判・否定するため。(47字)

第3段落の「『ふつう』の基準そのものが人や文化によって異なる以上、それを規範として他者に押しつけることは、暴力的な側面を持ちうる」が根拠。「暴力的」な理由は「基準が一定ではないもの」を「絶対的な規範」として押しつける矛盾にある。

問3の解答例「ふつう」を使う際に視野の狭さを自覚し、多様性を認めることが必要だ。(33字)

第4段落の「自分の見えている世界の狭さを自覚する必要がある。それが、多様性を認める社会の出発点になる」が根拠。指定語「ふつう」「多様性」が両方入っているか必ず確認。採点ポイントは①「ふつう」を使うときに視野の狭さを自覚する②多様性を認める姿勢につながる、の2点。文末は「〜ことが必要だ。」で締める。

問4の解答

アは「使うべきではない」とは言っていない(使い方の問題を指摘している)。イは「統計的には正確」という話は部分的な記述であり、それを「日常的に活用すべき」とは逆の内容。エは「世界共通の基準」の提案はない。本文の3段落の論点(実態乖離・バイアス・暴力性)と第4段落の主張(自覚と多様性)をすべて含むウが正解。

ジャンル:物語文

第6題(物語文)

最後の文化祭

対象:中3 / 難易度:★★★

本文

三年生最後の文化祭の準備が始まった日、凛は係を決める話し合いから少し外れた場所に座っていた。どの係になってもかまわなかった。残り四ヶ月で終わる中学生活に、もう大きな期待をしていなかったから。

脚本係に決まったのは半ば成り行きだった。ところが書き始めると止まらなかった。登場人物が勝手に動いた。台詞が自然に出てきた。締め切りを二日過ぎて提出した脚本を、演劇部出身の担任がひと目読んで言った。「これを上演したい」。

本番当日、幕が上がる直前に凛は袖から舞台を覗いた。自分が書いた言葉が役者の口から出て、観客に届いていく。おかしいな、と凛は思った。この言葉たちは、もう自分のものではない。けれど、その分だけ遠くまで届いているような気がした。

幕が下りたとき、凛の隣に担任が来た。「来年は何を書く?」。凛はすぐには答えられなかった。でも、胸の奥に何かが灯った感覚があった。四ヶ月後で終わるはずだった何かが、まだ続くかもしれなかった。

問題

  • 凛が文化祭の準備に積極的に関われなかった理由を、本文中の言葉を使って35字以内で答えなさい。
  • 「この言葉たちは、もう自分のものではない。けれど、その分だけ遠くまで届いているような気がした」という描写に込められた凛の心情を55字以内で説明しなさい。
  • 「胸の奥に何かが灯った感覚があった」という表現が表す凛の心情の変化を、物語全体の流れをふまえて55字以内でまとめなさい。文末は「〜気持ち。」で終えること?
  • この物語の主題として最も適切なものをア〜エから1つ選びなさい。
    ア 文化祭の脚本を書くことで友人を作り、孤独を克服する物語。
    イ 期待を失っていた少女が、書くことを通じて自分の中に新たな何かが続くことに気づく物語。
    ウ 担任教師の励ましにより、夢をあきらめかけた生徒が前向きに変わる物語。
    エ 演劇部への入部を決意し、新しい夢に向かって歩み始める物語。
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問1の解答残り四ヶ月で終わる中学生活に、もう大きな期待をしていなかったから。(33字)

第1段落の「残り四ヶ月で終わる中学生活に、もう大きな期待をしていなかったから」が根拠。この一文が凛の無気力さの理由として明示されている。本文の言葉をそのまま使い、文末を「〜から。」でまとめる。

問2の解答自分の言葉が観客に届き、自分の手を離れた分だけ遠くへ広がっていく不思議な喜びを感じている。(45字)

「もう自分のものではない」=言葉が独立して他者に届いた。「その分だけ遠くまで届く」=自分の手を離れることで広がりを持った。書いた言葉が観客に届く体験を通じて、孤独に書き続けることとは異なる豊かさを感じている。採点ポイントは①言葉が自分の手を離れた②その分だけ遠くへ届く喜び、の2点。

問3の解答例中学生活の終わりに期待を失っていた凛が、書くことを通じて、まだ続くものがあると初めて感じた気持ち。(49字)

第1段落で「もう期待していない」→第2〜3段落で脚本を書く喜びを発見→第4段落で「四ヶ月後で終わるはずだった何かが、まだ続くかもしれない」という変化。採点ポイントは①最初は諦めていた②書くことで変化した③まだ続くという前向きな感覚、の3点が含まれているかどうか。

問4の解答

アは「友人を作る」描写はない。ウは担任が主導していない(脚本を書いたのは凛自身の意志)。エは「演劇部への入部」は描かれていない。本文全体は「期待を失っていた凛が書くことで変わる」という内面の変化が主題であり、これと一致するのがイ。

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長文読解は設問のタイプに応じた解き方があります。抜き出し・記述・選択肢の3タイプを正確に攻略することで、国語の得点は確実に安定します。

抜き出し問題:本文中の言葉を正確に拾う方法

抜き出し問題の正解は必ず本文のどこかに存在します。自分の言葉で言い換えると誤りになるため、本文の文字をそのまま拾うのが鉄則です。

1

設問が「何を」問いているか確認する

「理由を答えなさい」「心情を示す表現を抜き出しなさい」など、求められているものを明確にしてから本文を探す。

2

問題文のキーワードで本文を逆引きする

設問に含まれる言葉が本文のどこに出てくるかを探し、その前後を重点的に読む。

3

字数制限ピッタリの箇所を見つける

「10字以内」と指定がある場合、ちょうど10字前後でまとまっている表現が正解候補。

記述問題:問われている内容を簡潔にまとめる方法

記述問題は「自分の考え」ではなく「本文の内容をもとにした説明」が求められます。文末の型を決めて、本文から根拠を抜き出して組み立てましょう。

1

解答の型を決める

理由問題→「〜だから」「〜ため」。心情問題→「〜という気持ち」。要旨問題→「〜ということ」で終わる。

2

本文の核心部分を抜き出して組み立てる

接続詞(「なぜなら」「つまり」「そのため」)の直後は重要情報が続きやすい。

3

字数制限の8割以上を使う

50字制限なら40字以上が目安。短すぎる解答は情報不足で減点されやすい。

選択肢問題:消去法で確実に正解する方法

選択肢問題は直感ではなく消去法で間違いを排除していくほうが正答率が高くなります。

1

明らかに間違っている選択肢を先に除く

「本文に書かれていない内容」「本文の内容と正反対」の選択肢を先に除外する。

2

選択肢と本文を一文一文対応させる

選択肢の前半が合っていても後半に誤りが含まれる罠に注意する。

3

「すべて」「必ず」「絶対に」は疑う

断定表現を含む選択肢は誤りの可能性が高い。「場合がある」「〜のことが多い」のほうが正解になりやすい。